そう語ってくれたのは、今では立派に一人前の屋根職人となったAさんです。彼は屋根工事の仕事に就くまでの人生で「自分はもうダメだ」という自己否定を何度も味わってきたそうです。ふとした時に転機が訪れ、屋根職人の道を歩んでいくこととなります。技術を身につけることで、何処に行っても屋根さえあれば仕事ができるといった思いが生まれたのと同時に、お客さんから「職人さん」と呼ばれるようにもなり、自分に自信を持てるようになったと語ります。そして彼はこう続けました。「こうして今の自分が自分らしく生きていけるのは、何も知らない状態の自分に一から仕事を教えてくれた親方がいてくれたからです。」

Aさんは親方に職人としてなっていくための技術の他に、精神的な沢山の教えを受けてきたといいます。例えば「建築において屋根は家の一番上にあるものだから、そこが痛んでしまうと全部が崩れてしまう」など、屋根工事の職人になるまでは想像もしなかったことを耳にして衝撃を受けたといいます。他にはAさんが技術を持ち屋根工事にも慣れてきた頃に親方から「水はどんな穴でも通り抜ける。たとえ針の穴であっても見逃してはならない」と教えられたそうです。自分の中に慢心が生まれつつあった時期でもあったので、それは特に心に刻まれたとAさんは言います。それから決していい加減な仕事を施してはいけないと固く誓ったそうです。

今では「自分はダメだ」と思うことはなくとも、自信が揺らいでしまうたびに、ギリギリのところで手を差し伸べてくれた親方のことを思い出しては努力を続けてきたそうです。その恩を屋根を工事する職人として活躍することで、広く大きく返せていければいいと考えているとAさんは笑いました。